自分を憲兵に売ろうとしたジェネオラ・ロックの住人だけでなく、プラントを強奪しようとした凶悪犯親子をも救ったヴァッシュ。
住人たちはヴァッシュへの謝罪も兼ねてか酒宴を張り、飲めや歌えやの大騒ぎ。
だがそんな平和なひと時は、爆弾魔の強襲により一瞬にして崩れ去る。
そして、ついにあるいは早々に、ヴァッシュは因縁の相手と相対するのであった。
というわけで、『TRIGUN STAMPEDE』第3話「光よ、闇を照らせ」の感想です。
- 原作は終盤のみ読んでいる
- 旧アニメはリアルタイムで見たり見なかったり
- 大まかな設定やヴァッシュの正体などは把握
- 細部は全然知らない
という中途半端な人間が執筆しております。
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『TRIGUN STAMPEDE』 #3 光よ闇を照らせ 感想
#3 光よ闇を照らせ
放送日 2023年1月21日
絵コンテ 山岡実 武藤健司 小島正幸
演出 大石美絵
なんだかんだで語れることはあり、3話の感想もしたためることにしました。
ナイヴズの声、本当に良かったですね。
ヴァッシュに対して終始「いつまでも馬鹿やってる愚かで可愛い弟」という慈愛を含んだ声色なの、本当に良かったです(語彙消失)。
第3話の感想は、以下の3つに分けて記述しました。
目も当てられない結末 ジェネオラ・ロック壊滅とローザの末路
ナイヴズの襲来により、ジェネオラ・ロックの街は崩壊。
何の罪もない子供が腕を失い瀕死に、そして五体満足のローザがヴァッシュを責める――
という結末は、痛ましさと苛立ちを綯い交ぜにしたような感情が胸に張りつく、形容しがたい憂鬱さを伴うものでした。
たとえば、母と生まれるはずだったきょうだいを喪い(殺すな)独り生き残ったトニスが「みんなヴァッシュのせいだ!出ていけ!」と責め立てる。
という展開だったならば、素直に鬱展開に心をゆだねることもできたでしょう。
ですが、私個人のローザへの好感度が微妙に低いため、いまいち同情しきれず、若干イラっとしつつどこか冷淡な気持ちになってしまいました。
「きっとヴァッシュが何とかしてくれる」じゃないですよ!?
この台詞はトニスを安心させるための発言であったと理解しています。
ですが、第2話でヴァッシュを憲兵に売ろうとしてたくせになに言ってんだ、と。酒盛りでチャラになったと思うなよ。
たとえば、上記の台詞を言ったあと「恥を忍んで頼みます」と言わんばかりのめちゃくちゃ申し訳なさそうな表情で、ヴァッシュが駆け上っていったほうを見上げる――
というような演出でもあればよかったのですが。
オレンジの技術力なら3Dキャラクターに繊細な表情をさせられるでしょうに。
ローザ周りの演出に関しては、ただの描写不足なのか意図的に行っているのか図りかねるのも、もやもやする一因かと思います。
弱者の強かさと醜さは紙一重なので、匙加減が難しいですね。
ナイヴズと腕の切断描写
ナイヴズの美声に惚れ惚れしながら『TRIGUN STAMPEDE』第3話を見ていて気になったのは、腕の切断描写でした。
ナイヴズは3話だけで3人の腕を異なる場面で切り落としています。
ヴァッシュがローザを腕を引いて走っているシーン、気がついたらローザが腕だけに……みたいな落ちが待っているんじゃないかと冷や冷やしました。
トニスが腕を失った今となっては、1本くらい持って行かれてもよかったのでは? と思わないでもないですが。ヘイトコントロール的な意味で。
ナイヴズにとっての「腕」とは一体何なのか。
レムに差し出した手を拒否されてしまったことが、彼の心になにかしらの影を落としているのでしょうか。
「腕の切断」にはどのような心理的な意味があるのか調べているうちに、興味深い記事を見つけました。
タイトルどおり、映画『スター・ウォーズ』における腕切断描写の演出についてのものです。
記事にはこう書かれている箇所がありました。
スター・ウォーズにおいて手の切断とは「象徴的な去勢」を意味しています。
腕の切断は相手の力を奪うことを表し……
ダース・ベイダーがルークの手を切り落としたことは、父親であるダース・ベイダーが息子のルークを辱め、子ども扱いしたことを示しています。
Gigazine:映画「スター・ウォーズ」シリーズで腕の切断シーンが象徴するものとは?
これは、ナイヴズとヴァッシュにも当てはまるのではないでしょうか。
つまりナイヴズが腕を切断するのは、ヴァッシュへの去勢行為。
そう解釈するなら、ヴァッシュ自身の腕もナイヴズが切り落としたということになりますね。
『TRIGUN STAMPEDE』は1クール? それとも2クール?
『TRIGUN STAMPEDE』第3話を見終えて思ったのは、「1クールアニメかな?」でした。
根拠としては第3話の終わりが、三幕構成で言うところの「ファーストターニングポイント」だったためです。
三幕構成とはハリウッド式脚本術で、ハリウッド映画はもちろん、ディズニー・ピクサー映画にも用いられています。
「三幕」とはいうものの、実際は、第一幕、第二幕前半、第二幕後半、第三幕の4分割。
日本の「起承転結」に似ているように思えますが、三幕構成は「起承承結」です。転は承と承の間!
2時間映画のためのテクニックですが、漫画やアニメにも応用できる超王道の脚本術です。
三幕構成の「ファースト・ターニングポイント」とは、第一幕終了を告げるイベントのこと。
主な内容は以下のとおり。
- それまでの状況が一変して引き返せなくなる
- 敵対者との衝突が発生
- 冒頭のセントラル・クエスチョンが再び示される
- 主人公は普通の世界を去る
「セントラル・クエスチョン」とは「果たして主人公は○○できるでしょうか」という物語全編を貫く問いかけです。
第一幕の1/3~1/2あたりで発生する「インサイティング・インシデント」と呼ばれるイベントにより提示されます。
1クールアニメだと、ちょうど第1話終盤から第2話終了までの間。
『TRIGUN STAMPEDE』だとヴァッシュがナイヴズのことを口にしていますね。
それが「果たしてヴァッシュはナイヴズを止められるでしょうか」というセントラル・クエスチョンとなっています。
そしてその問いかけは第3話終盤で再び突き付けられ、ヴァッシュは独り夜の砂漠に足を踏み出しました。
と、第1話~第3話までがきれいに三幕構成の第一幕に当てはまります。
それを踏まえると、全12話~13話の1クールアニメかなあ、と。
……ここまで、散々1クールアニメである前提で書いてきましたが、2クールの可能性もあるなコレ。
ウルフウッドのこと忘れてた!
物語のメインキャラは、第一幕のうちに登場もしくは存在を示唆させておくのが鉄則。
ですが、キービジュアルにも描かれているウルフウッドは、第4話からの登場。
第3話時点ではウの字も出てきていません。
ということは、まだ第一幕は終わっていない……だと……?
2クールの場合だと6話終盤がファースト・ターニングポイントになります。
1クールでもミッドポイント(話の流れがひっくり返る特大イベント発生ポイント)に当たりますので、心を強く持ちましょう。
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