攫われたメリルとロベルトを追って、第三都市・儒来に潜入するヴァッシュとウルフウッド。
そこでヴァッシュは思わぬ人物と再会し、あの惨劇を突き付けられる。
一方メリルたちは、ドクターから人類救済という崇高な理念、あるいは自己正当化を聞かされていた。
倫理にもとる研究の結果生み出された異形たちに、メリルは思わず――
というわけで、『TRIGUN STAMPEDE』第10話「人間」の感想です。
- 原作は終盤のみ読んでいる
- 旧アニメはリアルタイムで見たり見なかったり
- 大まかな設定やヴァッシュの正体などは把握
- 細部は全然知らない
という中途半端な人間が執筆しております。
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『TRIGUN STAMPEDE』#10 人間 感想
#10 人間
放送日 3月11日
絵コンテ 川尻善昭
演出 山岡実
これ、完全に分割2クールですね(そればっかり言ってる)。
三幕構成における最終幕――第三幕は、主人公の変化や成長などのお披露目イベントです。
ですが、いまのところヴァッシュは曇らされてばかりで、内面の変化や成長が明確に描かれていません。
こんなの「ひのきのぼう」「おなべのふた」でボス戦に向かうようなものじゃないですかー!
負けイベ確定ですよ。そんな状態で1クール完結とかないない!
第10話の感想は、以下の3つに分けて記述しました。
第三都市・儒来
『TRIGUN STAMPEDE』の第三都市ジュライは、漢字で「儒来」と表記されていることがあったのですが、今回その理由が明らかになりました。
第三都市ジュライは、ビビッドなネオン看板が輝く猥雑な摩天楼――上海や香港、あるいは重慶を思わせるサイバーパンクな街並み(申し訳程度のジャパン要素)!
だから漢字表記だったのかと得心しました。中国モチーフが現代のサイバーパンクのトレンドですね。
王道サイバーパンク小説(忍殺語に惑わされるな)であるニンジャスレイヤーでさえも、スピンオフの「スズメバチの黄色」では中華風を取り入れていましたっけ。
「ニューロマンサー」や「ロードランナー」に代表されるように、かつてサイバーパンクと言えば日本でした。
その理由のひとつとして、1980年代から1990年代にかけて、日本が先進的なテクノロジーやサブカルチャーの中心地として注目を集めたことが挙げられます。
その頃の日本人も金に物を言わせていろんなもの買いまくって欧米で顰蹙買ってたんですよね~。中国人のこと叩ける立場じゃない。
ですが、在りし日の栄華は見る影もなく。いまや日本は衰退の一途です。
その一方で中国が急速に経済・技術の発展を遂げ、その影響力が世界的に拡大。
AI技術やビッグデータ解析技術、クラウド技術などの分野で飛躍的に進歩しており、都市部ではアジア的な猥雑さと近未来感が融合した都市景観が広がっています。
悲しいかな、輝かしい未来が描けない日本はもはやサイバーパンクの舞台たり得ないのです。
……『TRIGUN STAMPEDE』と一切関係ない感想だなコレ!
鉛の憎しみその身に受けて
ジュライに潜入したヴァッシュとウルフウッド。
ですが、ヴァッシュが放ったやけに雄々しいくしゃみのせいで、うっかり憲兵に見つかってしまいます。
さらに、第1話で登場した杉田チャック・リーの再登場と、久方ぶりのコメディシーンにほっこりしました。秒で終わりましたけど。
さすが『TRIGUN STAMPEDE』。ヴァッシュを曇らせるのに余念がない。
ジェネオラ・ロックで両親を喪った憲兵が感情に任せて発砲。
ヴァッシュは弾丸を無言で受け止め、悄然とその場立ち去ります。
狼狽しつつ彼のあとを追ったウルフウッドは、「人間相手にした途端、どんくさくなりよって」
と苦言を呈しますが、君も同じことしてるでしょ~。
第6話のアバンで、ウルフウッドは逃亡者の銃撃をすべて受けています。避けることもパニッシャーを盾にすることも、先制することもできたのに。
さらにウルフウッドは、
「嫌でも想像つくわ。オドレみたいな異形のモンが、いままで人間共にどないな目に遭わされてきたんか」
と、ヴァッシュのつぎはぎだらけの身体を見て言いますが、これもウルフウッド自身が含まれているように思えます。7話でモブに化け物と言われていましたし。
ただ、ウルフウッドがヴァッシュと決定的に違うのは、撃たれた後に相手を始末すること。それはそれ、これはこれです。
似ているのに正反対。同じ場所に立っているけど背中合わせ。違う景色を見ている。
ですが、同じ空の下をそのままっ直ぐ歩き続けていたら、やがて一周してお互いの姿を真正面から見つめ合うことはあるかもしれません。
「正しい人」は空気が読めない
軽率ともとれるヴァッシュの「善良」な発言に対して度々言及してきましたが、今回はメリルがやらかしました。
まず、ザジに「人間とプラント、どっちがこの星のためになるの?」と問われたとき。
「このままでいいと思ってません。プラントに代わる、植物を育てている人もいます」
とメリルは答えましたが、なんか的外れじゃない?
「人間は愚か」という前提に対して、「賢くあろうとしているから様子見して」という意の回答だったのでしょうが、そこにはワムズの視点が欠けています。
ザジの言う「この星」とは、ノーマンズランドの生態系――つまりワムズの提喩です。
植物でノーマンズランドを緑化すれば、生態系は大きく変化します。
人間とプラントにとっては良い環境になるでしょうが、ワムズにとっては? まあ、草生えたところでどうにかなりそうな生命体ではなさそうですが。
ドクターが研究所ツアーに連れ出さなかったら「そういうとこだよ、人間」と突っ込まれていたところです。
そして決定的なのは、培養層内の実験体に対する「可哀想」発言。
コラー! 上から目線で正論言うな※って1話でロベルト先輩からたしなめられたでしょ!
※「『卑怯』ってのは恵まれたやつの使う言葉だ」
メリルの台詞がエレンディラの尊厳を傷つけた結果、ロベルト先輩は……。
正直なところ、死亡フラグが服着て飲んだくれてるような先輩でしたから、そこまで大きなショックはありませんでした。1話の時点で予想済みだよ!
取り返しのつかない失敗と託されたデリンジャーは、メリルをどのように成長させるのでしょうか。
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