プリンセッション・オーケストラ32話感想|路上ライブの違和感と善意の衝突

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プリオケ32話では、プリンセスたちが久々に路上ライブを行い、個人としての活動や息抜きの場面が描かれました。

しかし、白の女王の警告を受けた直後というタイミングの奇妙さや、リップルの善意がピュリティの怒りを引き出す展開など、噛み合わなさが目立つ回でもあります。

本記事では、路上ライブの違和感と、善意が通じないプリンセスたちのやり取りを中心に32話を掘り下げます。

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路上ライブが抱える「噛み合わなさ」|なぜ今なのか?

32話で突然提示された路上ライブには、どうしても噛み合わなさを感じてしまいました。

その理由は単純な「シリアスの合間の息抜き回だから」という枠を超えています。

物語上の状況、キャラクターの置かれた立場、そして白の女王から受け取った警告――

それらを踏まえると、「あえて今ライブをやる」という選択は、どうにも違和感が残ります。

この違和感は「ライブの是非」ではなく、「なぜこのタイミングで?」という一点に収束します。

警告が曖昧に扱われてしまっているという根本的な問題

白の女王の言葉は、シンプルに言えば「強すぎるミューチカラは災いを招く」という警告でした。

具体性は乏しいものの、少なくとも注意を要する事態を示しています。

ところが、プリンセス側はその言葉を「要領を得ない」と受け取り、深刻性をほとんど評価していません。

しかし、この反応にはどうしても引っかかりがあります。

  • 災いの中身は不明でも、強いミューチカラは危険らしい
  • 強いミューチカラの管理・調整のため花の騎士が襲ってくる

状況証拠を積み上げるほど、「『要領を得ない』で片づけるにはリスクが高すぎるのでは?」という感覚が生まれてしまいます。

つまり、白の女王の警告を、プリンセス側は「深読みしない方向」に振り切ってしまっているのです。

この受け取りのズレが、物語上の大きな噛み合わなさを生んでいます。

ながせの語り出しは自然だが……?

ながせが「オンとオフはしっかり切り替えないとあかんなー」と言い出すのは、完全にいつもの描写です。

ここには特に不自然さはありません。

彼女らしい気遣いと空気の入れ替えで、先輩たちが張り詰めた状態になっているのを和ませたい、という意図も理解できます。

問題は、そこからライブに至る議論の流れです。

32話の会話を整理すると、

  1. オンとオフの切り替えが必要
  2. プリンセスも大事だけど、アリスピアはそれだけじゃない
  3. 大人になったらできないことも出てくる
  4. だから今できることをやったほうがいい
  5. とはいえ女王との戦いで息つく暇がない
  6. なっち以外は個人のアリスピア活動ができていない
  7. なら休みにライブしよう、となっちが提案

筋道だけ見れば破綻はありません。青春アニメなら自然な流れです。

しかし、白の女王の警告を聞いた直後のタイミングであることを踏まえると、「いや、今それやる?」と立ち止まってしまうのです。

ライブは人を集めます。人を集めれば感情が動きます。感情が動けばミューチカラが発生します。

ミューチカラは「感情エネルギー」なのだから、ライブをやれば自然と強めのミューチカラが発生する状況になります。

しかも出演者は、プリンセスとプリンセスのバッファーが務まるなっちのミューチカラつよつよ4人組。

そしてプリンセスたちは、強いミューチカラが生まれると花の騎士が襲撃してくることを、すでに何度も経験しているのです。

にもかかわらず、「先輩たちの息抜き」→「ライブをやろう」と結びつくのは、どうしても脈絡が弱く感じられます。

息抜きの手段はライブしかないのか?

32話の流れにおける最大の問題は、「息抜き」「オンとオフの切り替え」という目的に対して、なぜかライブという最もリスクが高い選択肢が自動的に採用されてしまう点です。

プリンセスたちの私生活の描写や、アリスピア活動の多様性を考えれば、

  • 買い物
  • アリスピア内の小旅行
  • みんなでお菓子作り
  • お茶会(こっちはもう十分……ですが)

といった低リスクの「息抜き」はいくらでも選べます。

にもかかわらず、強いミューチカラが発生しやすいライブという選択肢だけに一直線に流れていく。

この一点こそが、「誘導されている感」を強めている部分です。

「制作側の意図」が見えてしまう瞬間

ここまで整理すると、なぜ「作り手の意図が透けて見える」と感じるのかが明確になります。

ライブが持つ要素は、

  • キャラの歌唱パートを出せる
  • 新曲を披露できる
  • 視聴者受けが良い
  • 制作スケジュールや尺の調整ができる

と、作品外の事情において非常に便利です。

したがって、「息抜き」→「ライブ」という結論が自然な流れではなく、制作側の都合で誘導されている流れに見えてしまうのです。

その結果、「なぜ今ライブ?」という噛み合わなさが決定的に目立つ回になったと言えます。

リップルの善意が通じない問題

32話で際立ったのは、リップルの善意がどうしてここまで噛み合わないのかという点でした。

まず整理しておきたいのは、リップルはもともと対話主義者ではないという事実です。

1・2クール目は対話路線ではなかった

1・2クール目の敵――バンド・スナッチは、人間の男性の姿をした元アリスピアンであり、意思疎通も対話も可能な存在でした。

しかしプリンセスたちは、彼らに対してほとんど対話を試みていません

バンド・スナッチは自分たちの信念と女王への忠義で行動していたため、たとえ話しかけたところで和解は難しかったでしょう。

とはいえ、リップル自身も対話という選択肢を積極的に取るタイプではなかったのは確かです。

たとえば、18話のカリストの「対話」では、彼女は「理解をしようと努める」という態度で、最終的にカリストを糾弾して決裂しました。

だからこそ、今回のピュリティへの説得は、リップルにとって、実は「経験値の浅いコミュニケーション」です。

新たな敵の正体が「同じ学校の先輩とその妹」だと分かったことで、初めて「この子たちとは話せるのでは?」という期待がリップルの中に生まれ、それが彼女の言動に影響し始めた――という構図です。

そもそも守る対象が違う

今回、リップルの発言がピュリティの怒りを招いた最大の理由は、お互いが守ろうとしている対象が微妙にズレていることでした。

  • リップル(みなも)
    • 地球の女の子たちの「夢」や「憧れ」、その象徴の国としてのアリスピア(とそこに住まうマスコット)
  • ピュリティ(りり)
    • アリスピアンと彼らが住む世界アリスピア

リップルはこの違いを十分理解しないまま、善意だけで語りかけてしまいます。

白の女王はアリスピアのためを思ってやってるのかもしれないけど、それは多くの人を悲しませることだよ

引用元:『プリンセッション・オーケストラ第32話』

ここでいう「多くの人」とは誰なのか。ピュリティの守りたい「多くの人」と一致しているのか。

そこを説明できないまま踏み込んでしまう。

そのためピュリティには、「あなたは私が守っている世界のことを全然わかっていない」としか思えないのです。

「プリンセスだから」は決定的にまずい

さらにリップルは、立場の言葉を使ってしまう。

だから私たちはそれを止めなくちゃならないんだ。プリンセスだから

引用元:『プリンセッション・オーケストラ第32話』

この一言は、ピュリティにとって自分の正義を立場で否定されたという強烈な印象を与えてしまいます。

リップルは立場で語っているつもりはありません。むしろ自分の中の正義の根拠を説明したつもりなのでしょう。

しかしピュリティにとっては、「プリンセスであるあなたが、プリンセスではない私の正義を切り捨てた」という構図になってしまう。

ピュリティはピュリティなりの使命感と正しさを持って戦っています。その背景には友の存在や、アリスピアの未来への責任があります。

そんな彼女にとって、「プリンセスだから」は最悪のワードでした。

ピュリティの「確認」は怒りの噴火点

ピュリティの台詞、

あなたたちはプリンセスだから、アリスピアも、そこに生きるアリスピアンたちも守るのが使命なんですよね?

引用元:『プリンセッション・オーケストラ第32話』

これは単なる確認ではありません。

「あなたは自分が何を言っているか分かってますか?」という追及です。

ピュリティはこの瞬間、リップルが「価値観のズレ」に全く気づいていないことを悟ります。

怒りが爆発するのは必然でした。

リップルの善意は、ピュリティにとって逆に「自分たちの正義を軽んじられている」という痛烈な感覚へと変換されてしまったのです。

リップルの未熟さが露呈した回

今回の失敗は、リップルの善意の問題ではありません。

善意をどう届けるかという経験値の不足が浮き彫りになっただけです。

  • 自分の守る対象が何か説明できていない
  • 相手の守る対象を理解していない
  • それでも立場を根拠に語ってしまう
  • 善意が相手にとって攻撃に見える、という想像ができていない

こうしたすれ違いの積み重ねが、ピュリティの怒りを引き起こしたと言えます。

そしてリップルにとっては、善意は通じるとは限らないという初めての現実的な挫折の瞬間でした。

まとめ|路上ライブと善意のすれ違い

32話では、プリンセスたちの個人活動としての路上ライブが描かれましたが、白の女王の警告を踏まえるとタイミングの違和感が強く残ります。

リップルの善意が通じない場面では、守る対象のズレが顕著になり、言葉の衝突が火種となりました。

ピュリティの激昂は、正義や使命の解釈の違いがいかに衝突を生むかを象徴しています。

全体として、32話はキャラクター間の認識の違いと意思疎通の困難さが、物語上の緊張として浮き彫りになった回です。

制作側の意図や演出には疑問も残るものの、キャラクター同士の「正義のすれ違い」を見る視点で分析するには示唆に富んだエピソードでした。

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