プリンセッション・オーケストラ第22話は、前半クライマックスに向けた助走の一話でした。
派手な戦闘が繰り広げられたものの、大きな転換点が訪れることはなく「敗北からの再起」という流れに収まります。
しかしその中で、落ち込むみなもを支えるなっちの優しさや、赤の女王が口にした天秤の言葉が強い印象を残しました。
さらに「人間の少女」と「アリスピアン」の非対称性を突きつける要素も加わり、戦いの意味が一層深く問いかけられた回だったといえるでしょう。
ここでは、戦闘描写とキャラクターの心情を中心に、第22話の見どころを振り返ります。
本記事は、各話を視聴した直後の印象と考察を記録したものです。
あとの展開を踏まえた修正は加えていません。
そのため的外れな推測も含まれますが、「その話数当時の読み方」としてお楽しみいただければ幸いです。
え? 23話? 見ましたよ? ちょっと喪に服させて。
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バンド・スナッチの新曲『Perfect Showdown!』
第22話で披露されたのは、予想外の新曲『Perfect Showdown!』でした。
11話・12話で歌われた『使命は赤きセレナーデ -Ver. First Blood-』は「奪う者・刈り取る者」としての姿を強調し、余裕すら漂う挑発的な歌い方が印象的でした。
ところが今回の新曲は、まったく異なるトーンを打ち出しています。
歌詞には相手を叩き潰す強者の自負と同時に「死地へ赴く悲壮感」が込められており、バンド・スナッチの覚悟そのものを体現するような内容でした。
歌声も前回のような軽やかな余裕ではなく、張りのある力強さが前面に出ています。
彼らがただの「奪う存在」ではなく、戦いの中で自らを賭ける者たちであることを印象づける楽曲でした。
てっきり『使命は赤きセレナーデ』の完全版が来ると思っていたので、まさかの新曲に驚きを隠せません。
その一方で、完全版が本編で日の目を見ることなく女装回ED曲で終わってしまったという結果に、くすりとしてしまいました。
みなもを支えるなっちの存在
バンド・スナッチに敗れた後、プリンセスたちは三者三様に沈み込み、重い空気に包まれていました。
誰もが敗北の痛みを噛みしめていたからこそ、誰かが泣いてしまえば仲間全体の心が完全に折れてしまう──そんな緊張感が漂っていたように思います。
だからこそ、みなもは仲間の前で弱音を吐くことができませんでした。
その彼女に寄り添ったのが、幼なじみのなっちです。
なっちは「アリスピア、もうほっといちゃおうか」と、投げ出すようでいて実は優しい言葉をかけました。
みなもが本気で無責任なことをする子ではないと分かっているからこそ、「泣いてもいい」「頼ってもいい」と伝えるための包み込むような言葉だったのでしょう。
さらに印象的だったのは、なっちがみなもがプリンセスであることに気づいていた、という事実です。
みなもにとって、なっちは唯一安心して弱音を吐ける存在でした。
プリンセスだと気づかれていたと知ったあとに、みなもが泣きじゃくりながら敗北を打ち明けられたのは、その信頼の証だったといえるでしょう。
同時に、私自身もこの場面では胸をなでおろしました。
なっちの揺るがない優しさを見て、「シンフォギア」の未来のように仲間が闇堕ちして敵になる展開はないだろう、と直感できたからです。
企画原案の金子氏が「もともと未来は戦場に出すつもりはなかった」と語っていたことも併せて考えると、プリオケにおけるなっちは最後まで日常の象徴であり続けるのかもしれません。
弱音を肯定する優しさと非対称性
なっちがみなもにかけた「アリスピア、もうほっといちゃおうか」という一言は、単なる慰めの言葉以上の意味を含んでいたように思います。
表面的には弱音を肯定する優しさですが、その裏には「人間の少女たちはアリスピアを捨てて帰ることができる」という現実が見え隠れしています。
アリスピアンはアリスピアから逃げられない存在であるのに対し、人間の少女たちは最悪のときには現実世界に戻れる――
バンド・スナッチが強硬手段としてミューチカラを奪う理由の一端は、こうした非対称な関係にあるのではないか、とすら思えます。
アリスピアンにとっての「人間の少女」
この問題は、21話冒頭で描かれた「一般的なアリスピアンは歌やダンス、料理といったことができないため、それらができる人間の女の子を敬っている」という構図とも重なります。
人間の少女たちは、アリスピアンにとって憧れであり、支えであり、同時に均衡を崩す存在でもある。
ドランが「お前たちの存在は、アリスピアのあるべき姿を歪めてるんじゃないか?」と突きつけた言葉とも響き合う部分です。
なっちの台詞は、みなもを気遣うと同時に、この「非対称な関係」の核心を不意に突いてしまったのかもしれません。
彼女が本気でそう考えているわけではなくても、その一言が持つ含みは、アリスピアという世界が抱える根本的な問いを浮き彫りにしていたように思います。
赤の女王の問いかけが示すもの
赤の女王が発した「選ばれるべきは、どちらなのだ」という一言は、断定や威圧というよりも、運命を見極めようとする静かな響きが宿っていました。
「人事を尽くして天命を待つ」かのように、己の信念を抱えつつも最終的な裁定を委ねるような印象です。
もし「どちら」の一方がプリンセスを指しているのだとすれば、女王は最後まで自らの正義に確信を持ち切れていなかったことになります。
一方で、この「どちら」がプリンセスではなく、まだ姿を見せていない第三勢力を指していると考えることもできます。
鏡の国のアリスの物語に存在する「白の女王」のような存在──アリスピアの統治権を賭けた戦いが、定期的に起こる摂理として組み込まれている可能性です。
そうだとすれば、ドランが語った「これからのアリスピアは強いやつしか生き残れない」という言葉は、単なる挑発ではなく「近づきつつある戦争の前触れ」だったのかもしれません。
いずれにせよ、この台詞は赤の女王を絶対的な支配者として描くだけでなく、彼女自身も「裁定者に過ぎない」位置に置くものとして響きます。
彼女が運命を決めるのではなく、むしろ「運命に選ばれるべき存在が誰かを見極めている」という含みが、物語の今後を大きく左右しそうです。
まとめ
22話は、派手な戦闘や新曲のお披露目がありつつも、本質的には「前半クライマックスへ向けた助走」といえる回でした。
敗北で傷ついたプリンセスたちが、それでも一歩前へ進もうとする姿を描いたことで、次なる戦いの意味がより大きなものへと膨らんでいます。
特に印象的だったのは、泣きじゃくるみなもを支えたなっちの優しさと、赤の女王が示した冷徹な天秤のまなざし。
このふたつの場面は、互いを思いやる「現在を共有する力」と、勝敗に縛られた「摂理の力」という対立軸を鮮やかに浮かび上がらせていました。
22話で描かれた揺らぎが、次回以降どんな決着へと導かれるのか──物語はいよいよ、前半戦のクライマックスへ突入します。
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