なつの路上ライブがついに完奏され、彼女の成長と揺れる想いが印象的に描かれた『プリンセッション・オーケストラ』第10話。
新キャラクター・みかんの登場により、物語はさらなる転機を迎えます。
みなも自身も「メジャー化計画」始動をきっかけに、(強引な手段によって)少しずつ自分の夢と向き合い始めました。
一方、敵対組織・バンド・スナッチ内では、カリスト復帰を巡って静かな亀裂が広がりはじめています。
少女たちの挑戦と、敵組織の揺らぎ――それぞれのドラマが交差する、転換点のエピソードとなりました。
なっちの路上ライブに込められた想い
第10話の冒頭では、なっちの路上ライブが描かれました。
第1話では途中で中断されてしまったライブでしたが、今回は見事に完奏され、観客たちから大きな歓声が上がります。
その場には、もちろん、みなもやながせ、かがりの姿もありました。
明るい曲なのに、どこか重い? 歌詞と衣装に見るギャップ
披露された楽曲は、軽やかで明るい曲調が特徴的です。
しかし、その歌詞に耳を傾けると、
「ちょうどいい距離 心地良い空気 今日も明日もずっといっしょだね」
「どんなときだって そばにいてあげる」
と、どこか執着や切なさを感じさせるフレーズが含まれていました。
一見ポジティブな言葉の並びですが、「ちょうどよさ」や「ずっと一緒」という言葉の強調は、むしろ関係の不安定さを逆に浮かび上がらせているようにも感じられます。
この歌が誰に向けられているのかは明言されていませんが、彼女のこれまでのエピソードから考えると、みなもに向けた「ラブソング」である可能性もありそうです。
また、注目したいのは衣装の色合いです。
公式サイトによれば、なっちのイメージカラーはオレンジですが、今回のライブ衣装は黒とグレーを基調にしており、明るい曲調との対比が目を引きました。
この衣装自体は、第1話で中断された路上ライブの時にも着ていましたが、8話を経たいまとなっては意味深長。
このギャップは意図的なものと考えられ、彼女の中にある言葉にしきれない感情を表現しているようにも思えます。
完成したようで、まだ未完成なステージ
この路上ライブは、第1話で叶えられなかった夢の続きでもあり、なっちにとってようやく「一区切り」をつけられる舞台だったはずです。
しかし、歌詞や衣装の選択、そしてどこか迷いを残したような表情からは、なっち自身がまだ完成とは言いきれない内面を抱えていることもうかがえます。
演出面では、全体的に省エネ作画ではありましたが、照明やカメラアングルの工夫によってライブシーンは華やかに仕上げられていました。
表面は明るく鮮やかでも、その奥にある「言えない気持ち」や「揺れる想い」を感じさせる、印象的なライブだったと思います。
新キャラ・みかんの個性と挑戦
第10話では、新たなキャラクター・みかんが登場。
なつの路上ライブが終わり、帰路に就くみなもたちは、地面を揺らすような「ドン」という大きな音を耳にします。
その音の正体は、なんと少女がひとり、道端で演武のような動きをしている姿でした。
「武術×音楽」という異色のスタイルに挑戦
みかんが披露していたのは、武術をベースにした動きでしたが、彼女の話によれば、それを音楽と融合させた新しい表現スタイルを模索中とのことです。
現在は、演武にダンスの要素を取り入れながら、ステージパフォーマンスに昇華させようと試行錯誤している最中のようです。
作中ではまだ明確な「音楽パート」との融合は描かれていませんでしたが、演出として地響きのような効果音や、みかんの迫力ある動作が強調され、ただの異色キャラではない説得力を持たせていました。
家族と道場を想うまっすぐな動機
みかんの行動の根底には、明確な目的があります。
彼女の実家は道場を経営していますが、近年は門下生が減り、家族も悩んでいるとのこと。
そんな現状を打開するために、彼女は「武術×音楽」という異分野の融合に挑み、注目を集めることで新たな門下生を呼び込もうとしているのです。
アリスピア活動の目的も、アイドルとして名を上げたいというより、「道場と家族を守るため」という非常に具体的でまっすぐなもの。
自己表現や憧れから出発しているほかのキャラクターとは異なる動機が、彼女の個性をより際立たせています。
夢や才能という言葉だけでは片付けられない、責任感と実利が同居したキャラクターとして描かれているのが印象的です。
次回予告に登場した「歌姫」は誰?
次回予告では、みかんが「歌姫に助けられる夢を見た」と語る場面が登場します。
その「歌姫」の特徴は、「カッコよくて、ごはんと稲妻を食べて、月、粉砕する人!」
どう考えてもシンフォギアの響です。本当にありがとうございました。
みかん役の声優・大久保瑠美は、シンフォギアシリーズにて、響に助けられる少女役として出演していた過去があります。
このメタ的な構造をあえて予告に仕込むあたり、本作ならではの遊び心とオマージュ精神が光っていると感じました。
みなも、動き出す?「メジャー化計画」の始動とその裏側
第10話では、新キャラ・みかんとの出会いをきっかけに、みなも自身にも少しずつ変化の兆しが現れます。
それは、小さな揺れかもしれませんが、確かに彼女が前を向こうとしている証でした。
みかんに刺激を受けたみなも
みかんの堂々とした態度や明確な目標意識に触れたみなもは、その姿に素直な憧れを抱きます。
「やっぱり、ちゃんと目標を持って頑張っている人ってカッコいいなあ」という台詞が、その感情を端的に表していました。
とはいえ、自分自身の目標について聞かれると、まだ人前に出ることへの不安が勝ってしまうようです。
ナビーユから、
「みなもだって最近、目標ができたじゃないか。お菓子作りの動画、配信するんでしょ?」
と声をかけられても、「まだまだ人様には……」と遠慮がちな笑みを浮かべる彼女の姿には、どこか初々しさと葛藤が同居していました。
ながせ発案「メジャー化計画」始動!
それではこれより、『目指せアリスピアドリーム!空野みなものシンデレラストーリー情熱系』を開始する…#プリオケ pic.twitter.com/MDjVus1DOS
— 「プリンセッション・オーケストラ」公式 (プリオケ) (@priorche_info) June 9, 2025
そんなみなもを見かねたのか、ながせは突如「空前絶後の大大大大大デビューを飾れるように」段取りを考えると宣言します。
この計画には、かがりやナビーユも乗り気で、気づけばみなもはプリンセスの拠点へ強制連行される形に。
ここで始まるのが、まさかの『エヴァンゲリオン』パロディ。
眼鏡をかけて「ゲンドウポーズ」で椅子に座るながせに、「さうんどおんりー」と書かれた謎の板切れ。
「いわゆる単なるひとつの雰囲気アイテムです☆彡」
雰囲気づくりの方向性それでいいの!?
本気なのかふざけているのか、境界があいまいなながせらしさ全開の演出は、本作ならではの遊び心を感じさせます。
みなもの課題は「緊張」――解決法はナビーユの匂い!?
ナビーユ吸い☺️#プリオケ pic.twitter.com/70ITnxjJNX
— 「プリンセッション・オーケストラ」公式 (プリオケ) (@priorche_info) June 11, 2025
「メジャー化計画」が具体的に目指しているのは、みなもの動画配信デビューです。
しかし、最大の課題は「緊張してしまう自分」をどう克服するかという点にあります。
ながせから緊張をほぐすための「猫吸い」を勧められたみなもは、ターゲットをナビーユに定めて実行!
どうやら効果はてきめんだったようで、みなもはナビーユ吸いにドはまりしてしまいます。
…とはいえ、そんな微笑ましいやりとりも束の間、突如出現したジャマオックによって計画は一時中断。
みなもメジャー化計画はおあずけとなってしまいました。
今回の「メジャー化計画」は未遂に終わったものの、みなもの中には確かな変化が芽生えつつあります。
目標に向かって動き出した彼女が、どのように成長し、いつ動画を公開できるようになるのか。
物語が1クール目の終盤へと向かういま、その成功の瞬間が描かれる日もそう遠くはないのかもしれません。
カリストをめぐる静かな衝突|バンド・スナッチの亀裂
第10話では、表舞台で起こる「メジャー化計画」の賑やかさとは対照的に、バンド・スナッチの内側で静かに軋む不穏な空気が描かれました。
その中心にいるのが、初めて視聴者の前に姿を現したカリストです。
彼の登場によって、ベスを中心としたメンバー間にこれまで見えなかった緊張感が浮かび上がり、バンド・スナッチというグループの成り立ちや今後の動向に深い関心が集まります。
「なぜ戻ってきた?」カリスト復帰への疑念
ベスがカリストに向けて放った「なぜ戻ってきた。お前にはお前のすべきことがあるだろう?」という一言には、単なる不満以上のものが滲んでいました。
どうやらカリストは、しばらくのあいだグループを離れ、別の任務や目的を果たしていたようです。
彼がどこにいたのかについては明言されていませんが、いくつかの可能性が考えられます。
- アリスピア内のどこか
- 地球
- アリスピアでも地球でもない第3の世界
バンド・スナッチの由来である「バンダースナッチ」は、『鏡の国のアリス』のほか『スナーク狩り』にも登場します。
これは、彼らがアリスピアとは異なる次元を行き来する存在であることを示唆しているのかもしれません。
ベスの敵意と、スナッチ内の序列問題
カリストに対してもっとも強く敵意を見せていたのが、ほかならぬベスです。
「あとから来てリーダー面をしないでもらおうか」という台詞には、彼の中にある序列意識、そしてカリストへの根深い不信感が感じられました。
この「あとから」という言葉が、いつのタイミングを指しているのかは定かではありません。
しかし、ベスとドランが昔馴染みであることから察するに、彼らふたりが初期メンバーであり、カリストとギータはあとから合流したメンバーである可能性も考えられます。
ドランもまた、表面上は飄々としているものの、その声色にはいつもと違う棘が含まれていました。
表立っては対立しないものの、彼もまたカリストの復帰を快く思っていないように感じられます。
バンド・スナッチに走る亀裂、変化の兆し?
アバンでは、ベス・ドラン・ギータの3人とカリストが対峙する構図でしたが、10話のラストでは一転し、カリスト・ドラン・ギータがベスを見つめる構図に変わっていました。
わずか1話のうちにバンド・スナッチ内の立場関係が入れ替わる演出は、今後の展開への重要な伏線といえそうです。
この亀裂(実際足場の岩盤?に亀裂が!)は、ベスが今後「音楽性の違い」でスナッチを離れる展開を予感させます。
まとめ|夢を追う少女たち、揺れる敵組織。物語は転換点へ
第10話では、なつのライブやみかんの登場を通じて、プリンセス側の「夢」や「挑戦」が色濃く描かれました。
一方で、バンド・スナッチ内部ではカリストの復帰をきっかけに不協和音が鳴り始め、敵組織の揺らぎが見えてきます。
みなももまた、仲間たちに背中を押されながら一歩踏み出そうとしており、メジャー化計画が本格始動しそうな気配です。
少女たちの想いが交錯するなか、物語はまさに転換点を迎えようとしています。
次回、どの「セッション」が鳴り響くのか、期待が高まります。
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