突然の最終回のお知らせに「すわ打ち切りか⁉」と狼狽したものの、最初から2年間の連載だったとのこと。
円満終了なうえに全4巻と連載最長記録更新!やったねすぎたん!
と、言いつつも、やはりもっと続けてほしかったのが本音です。
すぎたんの描くエロい男女がもっと見たかったんや……。
遊戯王のコミカライズは、アニメが終了しても物語が完結するまで連載を続けるイメージが強いので、漫画だけ先に終わってしまうのはなにか納得がいかない。
本来アニメも2年予定だったのが、急遽3年目が決まった、とかでしょうか。
まあ、記事冒頭でずっとぐちぐち言ってても埒が明きません。
すぎたんロスを癒せるのはすぎたんの新連載だけなのだ。
それでは遊戯王ゴーラッシュ!!第4巻の考察(と書いて妄想と読む)です。
- 1巻
- 2巻
- 3巻
- 4巻
ズウィージョウはいったい何に怒りを燃やしていたのか
ズウィージョウの真の目的は、宇宙を破壊し新たな創造主になること――
ではなく、ユウディアスに自分の存在を認めさせることでした。
な、なんで……?
裏を返せば、ズウィージョウは、
「自分という存在はユウディアスに認められていない」
と感じていたということですよね。「認めさせる」が、なにを指すのか(承認か証明か)でまた変わってきますけど。
な、なんで……?(2回目)
ユウディアスに認められてなくてもよくない?
ズウィージョウの過去回想が最終話に挿入されていたものの、それだけではあまりに情報不足。
なにゆえ彼がユウディアスに執着していたのかが分かりません。
ズウィージョウは1巻で、人望篤いユウディアスに対する嫉妬が露骨な台詞を吐いていましたが、それは額面どおりに受け取ってもよいのか。
あまりにも分からなすぎるので、ズウィージョウの心理を読み解くために、以下の本を購入しました。
「強くあらねば」の呪縛
この『攻撃する人の心理がわかる本』では、心理学の一分野である「交流分析」を用いて攻撃する人の心理を分析しています。
「ゆるサイコパス」「深ゆるサイコパス」というキャッチーでゆるふわな造語が一抹の不安を掻き立てるのですが、内容は至極真っ当。アレな本じゃなくてよかった……。
この本によれば、怒りは大きく分けて以下の2種類があるとされています。
- 5つの「心の癖」(ドライバー)から生じる怒り
- 12の※「怒りの元」(禁止令)から生じる怒り
※数は諸説あり
「心の癖」と「怒りの元」の詳しい解説は割愛しますが、本書を読む限りでは、ズウィージョウは、
- 心の癖:強がりタイプ
- 怒りの元:「お前であるな」+「属するな」
の合わせ技のように思えます。
心の癖(ドライバー)による怒り
強がりタイプは、幼少のころに自分の弱さを認められなかった傾向が見られます。
また、弱みを握られるのを恐れて自己開示を避けることが多いため、寡黙な人物という印象を与えます。
その一方で、自分の言動や感情は相手が引き出したという言い方をするのが特徴です。
具体的には、自分が勝手に泣いたり怒ったりするのに、「あなたが私を泣かせた」「あなたが私を怒らせた」という言葉を使います。あくまでも、自分の考えや感情の責任は相手にあるとするのです。自分には非がないとする態度です。
引用元:高品孝之『攻撃する人の心理がわかる本』(自由国民社 2022年11月 P88)
ズウィージョウ、めっちゃ言ってたわ。
「その軟弱な言動が出会った頃より我を嫌悪させる」と。
特徴的な言い回しだったので、はっきりと覚えています。
なんなら1巻の感想で言及してたわ。まさかの伏線回収。
4巻の「我の存在をアイツに認めさせる」もこの範疇に入りそうですね。
心の癖が怒りを生み出すのは、自分自身も苦しいと思っていることだからです。
強者であることを強いられている人にとっては、弱いままでも許される人間や、弱さを肯定する人間は目障りで憎しみの対象となります。
怒りの元(禁止令)による怒り
心の癖は、上述のように被害妄想的な他者への怒りを引き起こします。
しかし、その一方で、怒りの元による怒りが表に出ないようにする防波堤の役割を担っています。
怒りの元による怒りは、自分も他者も死に追いやるほど激しいものだからです。
怒りの元は、乳幼児期~5歳までの間に、周囲の大人(主に親)から与えられたストレスによって身に着けます。
『攻撃する人の心理がわかる本』を読む限りでは、ズウィージョウは怒りの元「お前であるな」を持っていると推測されます。
「存在するな」の可能性もあるのですが、例として挙げられていたのが「絵師に粘着するヤベェオタク」だったので比較対象にするのが難しすぎる。もうちょっと汎用性高い例にしてくれ。
怒りの元「お前であるな」が生じるのは、ありのままの自分という存在を認めてもらえない経験に起因します。
趣味嗜好・性別などを否定される、他者と比較されるほか、周囲から過剰に期待されて育った場合もあてはまります。
「頭がいい」「神童だ」などと褒められて育った子が「お前であるな」の意識を持つこともあります。これも本来の自分ではなく「優秀でなければ自分ではない」との思いが刷り込まれるからでしょう。
引用元:高品孝之『攻撃する人の心理がわかる本』(自由国民社 2022年11月 P126)
怒りの元「属するな」も、幼少の頃に「自分は周りとは違う」と思い込まされることで身に着きます。
心の癖「強がりタイプ」と併せて考えると、ズウィージョウは、幼少期より暴力装置であることを望まれ、孤独な幼少期を過ごしたのではないでしょうか。幼少期があればの話ですけど。
この怒りの元は、普段は心の癖によって抑えられています。
強者であり続ければ自分自身でいられる。コミュニティに属していられる、という理屈です。
「強くあらねば」が破綻した末路
しかし、「強くあらねば」という心の癖が破綻してしまえば、溜め込んでいた憎悪が一気に噴出し「死の欲動」が発現します。
「死の欲動」は心理学者のフロイトが提唱した概念で、人類が持つ「無機質なものになりたい・無機質なものにしてやりたい」という欲求のこと。
ズウィージョウの心の癖が破綻し、「死の欲動」のスイッチが入ったタイミングは、おそらく第1巻よりも前――第4巻最終話でのズウィージョウの回想で描かれていた場面でしょう。
ラッシュデュエルを求めて旅立ちを宣言するユウディアスと、それに随伴する888万人の同胞。
部下に離反されたことにより、ズウィージョウは「強い自分」を維持できなくなりました。
ユウディアスは、戦後のあれこれが一段落したあとに上層部または最高議会に提言し、承認を得たうえで旅に出ていると思います。
しかし、そうなると軍・政府もユウディアスの「正義」を肯定したことになるので、ズウィージョウはさらに強い裏切りを感じたことでしょう。
「死の欲動」に突き動かされるズウィージョウは、宇宙が崩壊するのも厭わず自分の命も顧みず、ユウディアスを葬らんがために神の力を手に入れるのでした。
ズウィージョウは誰に認められたかったのか
ズウィージョウの「我の存在を認めさせる」が、「ユウディアスに勝利することで己の存在を証明する」という意味なら、ここまでの考察(と書いて妄想と読む)の辻褄は合うと思います。
しかし、「ユウディアスに承認されたい」という意味だった場合、ユウディアスはお前のなんなんだという疑問が残ります。
そもそも、ズウィージョウは本当にユウディアスに怒りを抱いていたのでしょうか。
ズウィージョウの存在を否定したのは誰だったのでしょうか。
それは、彼の養育者です。存在すればの話ですけど。
「怒りの元(禁止令)による怒り」の項目でも解説しましたが、ズウィージョウは「ありのままの自分という存在」を否定され、強者であることを求められながら育ったと推測されます。幼少期があればですけど。
したがって、ズウィージョウは、「いまの自分をユウディアスに」ではなく、「幼少期の弱い自分をかつての養育者に」認められたかったのです。
ユウディアスに攻撃が向いたのは、無意識には現在・過去・未来という概念がないため。
この解釈で行くと、ユウディアスの言葉でズウィージョウが救済されたのは、「自分の正義観が承認された」からではなく「敗北した=弱い自分が承認された」からではないでしょうか。
今回種本にした『攻撃する人の心理がわかる本』は、あくまでも交流分析を用いた簡単な解説書です。
さらに深掘りしたり、攻撃する人の救済について調べるなら、交流分析の専門書を読む必要があります。
値段が手ごろで比較的新しく、レビューの評価も高い、以下の2冊がよさげなのですが、
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先立つもんがねえわ。今月電気代ヤバいんだって。
気兼ねなく本を買える身分になりたいですね!
ズウィージョウは存在したのか
オーティスロード・マーク8Ver.を名乗る「アイツ」は、「ズウィージョウがいない『並行世界』の未来から運命の途切れたこの世界を助けに来たんだ」と言います。
「ズウィージョウがいない」と強調するからには、彼が存在しないのが漫画版世界の正史なのでしょう。
そして、「アイツ」がわざわざ異なる世界線を救いに来る理由とは?
これらのことから推測すると、
- 漫画版ゴーラッシュ世界と「アイツ」がいた未来の世界線は元は同じ
- 本来存在しないはずのズウィージョウが出現する
- 運命が分岐し、漫画版と「アイツ」がいた未来が並行世界化する
「アイツ」から見れば、漫画版世界は過去改編で生まれた世界ということに。
また、改変者が「アイツ」と因縁が深い人物なら、漫画版世界に介入する理由もできます。
さらに改変者がズウィージョウの養育者(というか製造者)なら綺麗に繋がるんですよね。
漫画版ゴーラッシュの連載が続いていれば、ズウィージョウはアニメ版のクァイドゥールの役割も担っていたかもしれませんね。
2年と言わずもっと続いてほしかった……。
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