最終話を迎えたプリオケ第48話「わたしたちのキセキ」。
これまで物語の中で語られてきた「応援」や「ミューチカラ」という言葉も、ひとつの答えを示すことになります。
本記事では最終局面の展開を振り返りながら、本作が最後に提示した「みんな」という言葉が、一体誰を指していたのかを考えてみたいと思います。
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「プリンセス・リップル」という結論
最終話で提示された象徴が「プリンセス・リップル」。
プリンセスたちの力と、世界中のミューチカラが重なり合って生まれた存在です。
物語は「プリンセス・リップル」いう概念によって、「特別な存在が世界を救うのではなく、みんなの力で未来へ進む」という結論を提示します。
しかし同時に、この展開には少し気になる点もあります。
「みんなの力」としてのプリンセス・リップル
48話で印象的だったのは、プリンセスたちが自分たちの「歌のカケラ」を手放す場面です。
やっぱり、世界を守るためにナビーユが犠牲になるのは違くて。プリンセスが守るのでもない。この世界に生きているみんなが、みんなで守って、未来へ進んでいくんだ
引用元:『プリンセッション・オーケストラ』第48話
という言葉とともに、みなもは自分の力を手放します。
そしてその選択に、ほかのプリンセスたちも続きます。
プリンセスたちが持っていた歌のカケラは、世界中から集約されたミューチカラと混ざり合い、ひとつの象徴的な力として再構成されます。
こうして生まれたのが「プリンセス・リップル」です。
それにより、プリンセスは「特別な存在」ではなく「みんなの一部」として位置づけ直されることになります。
残る違和感
この結論を見ていて引っかかる点もあります。
プリンセスたちは、これまで本当に「みんな」の中にいたのでしょうか。
物語の終盤で語られる「みんなで世界を守る」という言葉はとても王道です。
ただ、その言葉が提示されるとき、プリンセスたちはこれまでどこに立っていたのか――
次の章では、作中で描かれてきたプリンセスの立ち位置を少し振り返ってみたいと思います。
プリンセスは「みんな」の中にいたのか
前章では、最終話で提示された「プリンセス・リップル」が、プリンセスの力を「みんなの力」へと還元する象徴として描かれていることを見ました。
しかしこの結論に対して気になるのは、そもそもプリンセスたちが物語の中でどのような位置にいたのかという点です。
「みんなの力」という言葉が語られるとき、プリンセスたちは本当にその「みんな」の中にいたのでしょうか。
プリンセスが戦っていた相手
これまでプリンセスたちが戦っていたのは、キャロルそのものではありません。
彼女たちが対峙していたのは、ふたりの女王と、その配下であるバンド・スナッチや花の騎士といった存在でした。
女王たちは「災い」を恐れ、アリスピアを守るために女の子からミューチカラを奪っていました。
プリンセスたちはその行為を止めるために戦っていたのであり、世界全体の危機について主体的に考えて行動していたという印象はありません。
実際、キャロルという「災い」の問題について、プリンセスたちが深く議論する場面はほとんど描写されませんでした。
世界をめぐる認識の空白
世界そのものについても同様です。
序盤では一度「アリスピアとは何なのか」という疑問が提示されます。
しかしその問いは「裏設定は語られないから裏設定」というながせのメタ的な台詞で、そのまま流されてしまいました。
アリスピアの成り立ちは、最終話でナビーユの回想によって語られますが、その情報をプリンセスたち自身が作中で知る場面は描かれていません。
物語の中心にいるはずのプリンセスたちは、自分たちが関わっている世界の成り立ちや構造をほとんど知らないまま戦い続けていたことになります。
広がっていく「横のつながり」
一方で、物語の中でまったく関係が描かれていないわけではありません。
むしろ興味深いのは、ゲストキャラクター同士の横のつながりが徐々に広がっていくことです。
過去のエピソードに登場した人物同士が再び関わったり、同じコミュニティの中で関係が広がっていったりする様子は、物語の中でそれなりに描かれています。
そのため視聴者の目には、世界全体の人間関係が広がっていくようにも見えます。
しかしプリンセスはそこにいない
ただ、その関係の広がりの中にプリンセスたちが積極的に関わっているかというと、そうとは言い切れません。
もともとプリンセスたちは、ゲストキャラクターの生活の中に深く入り込むタイプの主人公ではありませんでした。
エピソードの中で出会い、同じ時間を過ごすことはあっても、その後も継続して関係が積み重なっていく描写は多くありません。
結果として、ゲストキャラクター同士の関係は広がる一方で、主人公であるプリンセスたちとの関係はあまり深まらない、という不可解な構図が生まれていました。
「みんな」という言葉の位置
こうして振り返ると、最終話で語られる「みんなで世界を守る」という言葉は、やや空虚な響きを持つことになります。
ゲストキャラクター同士のつながりは確かに広がっている。
しかしそのネットワークの中に、プリンセスたちが深く関わっているわけではない。
それでも物語は最後に、プリンセスの力を手放し、「みんなの力」へと還元するという結論を提示します。
その意味で「プリンセス・リップル」は、プリンセスを特別な存在から「みんな」の側へ戻す象徴とも言えるでしょう。
ただ、その結論を見ていると、もうひとつの疑問も浮かんできます。
この物語が語ろうとしていた「みんな」とは、いったいどこまでを指していたのでしょうか。
「みんな」という言葉は誰を指していたのか
最終話で印象的だったのが、「この世界に生きているみんなが、みんなで守る」という台詞です。
プリンセスだけが世界を守るのではない。
この世界に生きている人たち全員で未来へ進んでいく。
王道とも言える、とても力強い言葉です。
一方で、この言葉を聞いたとき、少し引っかかるものもありました。
この作品で語られてきた「みんな」とは、誰のことだったのかという点です。
これまでの「みんな」
作中で描かれてきた世界を振り返ると、物語の中心にいるのはほとんどが女の子たちです。
アリスピアに来ることができるのは高校生くらいまでの女の子のみで、エピソードの中で描かれるのも、
- アリスピアで活動する女の子
- 目標や夢を抱えた女の子
がほとんどでした。
大人の登場人物はほとんどおらず、人間の男性キャラクターもほぼ存在しません(バンド・スナッチはアリスピアンなので除く)。
例外的に登場するのは、みなもの家族とかがりの祖母といった程度で、物語の中心的な関係の中にはほとんど入ってきません。
つまりこの作品で描かれてきたコミュニティは、かなりはっきりとした形で「アリスピアに関わる女の子たちの世界」として構成されていました。
閉じたコミュニティとしてのアリスピア
その象徴的な例が、第18話のエピソードです。
みなもの母もかつてアリスピアに通っていたことが明かされ、「みなもに娘ができたら、その子もまたアリスピアに行くのかもしれない」という話が語られます。
しかしその話題は「女同士の秘密」として扱われます。
つまりアリスピアという場所は、
- 女の子たちの間で受け継がれていくもの
- 外にはあまり開かれていないもの
として描かれていました。
この構図を見ると、作品が描いてきた世界は広い社会というよりも、かなり限定された女子コミュニティだったと言えるでしょう。
最終話で広がる「みんな」
ところが最終話では、その「みんな」の意味が一気に広がります。
キャロルの脅威が地球にも及び、物語は「世界」の問題へとスケールを拡大させます。
そしてそこで語られるのが、「この世界に生きているみんなが、みんなで守る」という言葉です。
ここでの「みんな」は、明らかにアリスピアの女の子たちだけを指してはいません。
むしろ、全人類と呼べるようなスケールの言葉になっています。
本作はこれまで「応援」や「ミューチカラ」を通して、人と人との関係性を描こうとしていた作品でした。
その意味では、「みんなで世界を守る」という言葉は、ケアや関係性の広がりを示す結論としても理解できます。
しかし同時に、人間社会の広がりが十分に描写されていないことも事実です。
誰と誰がどのようにつながり、どのような関係の中で「みんな」という言葉が成立しているのか。
その具体的な関係があまり描かれていないまま、「みんな」という言葉だけが大きく拡張していったようにも見えます。
まとめ|あとがきにかえて
最終回ということで、物語のその後も少しだけ描かれていました。
バンド・スナッチの面々が、ナビーユを雑に扱いながらグータラ過ごしている姿が見られたのは素直にうれしかったです。
彼らが役目を終えて消滅していたら、危うく反転アンチになるところでした。
一年間見続けてきた作品として、個人的にもいろいろと考えさせられる最終回だったと思います。
とはいえ、この作品についてはまだ書き足りないことも多いです。
これまでの記事でも触れてきましたが、プリオケという作品が何を描こうとしていたのかについては、あらためて批評記事として整理してみたいと思っています。
かなり時間がかかると思いますが、気長に待っていただければ幸いです。序論だけで3,000字くらいになりそうだが大丈夫か?
そしてもうひとつ。
4月から始まるというプリオケの姉妹作(?)『ゴーストコンサート』も一応視聴する予定です。
ただ、感想記事を書くかどうかはまだ未定。
気が向いたら、またこのブログに感想を書いているかもしれません。
ひとまずこれにて『プリンセッション・オーケストラ』の感想記事は一区切りです。
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
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