プリンセッション・オーケストラ第27話感想|アップデートされた再演と、過去へ進む時間

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『プリンセッション・オーケストラ』第27話は、なっちのライブと花の騎士シンシアの再登場が重なるエピソードでした。

埠頭での戦闘ののち、ライブ会場を狙おうとするシンシアをプリンセスたちが阻止し、なっちのステージは無事成功。

初期の路上ライブを思わせる展開ながら、今度は誰も傷つかないアップデートされた再演として描かれます。

一方で、すみれ=シンシア説の揺らぎや、りりの変化、そして舞台となったアリスピアの風景には、世界の時間や構造そのものを示唆。

静かな決着の裏で、物語は確実に「次」へ進む段階へと入っていました。

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時間の逆行と観測者の影|白の女王が仕掛けた「再演」の構造

第27話では、プリンセスたちが花の騎士シンシアと再び対峙します。

戦闘の舞台となったのは赤レンガ倉庫のある埠頭。

戦闘中にシンシアがなっちのライブに反応し、標的をライブ会場へと変更しようとしますが、プリンセスたちがそれを阻止し、ライブは無事開催されました。

襲撃は未遂で終わったものの、「ライブ」というモチーフがここで再び登場したことには非常に示唆的です。

第1話でなっちがジャマオックに襲われたのは、路上ライブの開始直後でした。

つまり、27話でも物語の時間が巻き戻されたかのような構図を再現しているのです。

過去のアップデートとしての遡行

白の女王が登場して以降、25話・26話・27話と、過去の出来事を改良された形で再演する流れが続いています。

25話ではベスの「組体操」、26話ではプリンセスが毎回行っていた「ジャマオックを倒して歌のカケラを得る」行為――

どちらも1・2クール目の出来事をシンシアがトレースしていました。

この「遡行の連鎖」は偶然ではなく、白の女王の意志、あるいはアリスピアという世界の構造に起因しているのかもしれません。

ただの反復ではなく、改良と反転を伴う再演として描かれている点が特徴的です。

白の女王の「時間」|再構築する観測者

白の女王が『鏡の国のアリス』において逆行する時間を生きる存在」であるように、彼女の陣営は過去を観測し、再構築していく勢力として描かれている可能性があります。

シンシアの模倣的な行動は、単なる戦術の最適化ではなく、世界の時間そのものを巻き戻しながら再構築する兆候として読むこともできそうです。

「観測から介入へ」|すみれとりりが示す転換点

ここで、これまでの「すみれ=シンシア」仮説には大きな矛盾が浮かび上がります。

シンシアの正体がすみれだとすれば、同じ学校に通うなっちのライブを知らなかったのは不自然です

知っていれば、最初からライブ会場を狙っていたはず――それこそ、第1話でベスがかがりのライブを襲撃したように。

いまのなっちはそれなりの規模の会場でライブを行う人気者です。

アリスピアchやアリスピア内部で情報が共有されていてもおかしくなく、学校の女子生徒の間でも話題になっていたと考えるのが自然でしょう。

実際、なっちの友人であるまなびや小学生のみらいも観覧に来ていました。

すみれの興味と「もうひとりの中身」

「歌やダンスが苦手で、アリスピアにはアリスピアンと会話をしに行っている」と語っていたように、
すみれはアリスピアに強い興味を抱いています。

そのため、人間(地球側)への関心が薄く、ライブ情報に無頓着だった可能性もありますが、一方で「声や口調はすみれでも、中身は別の存在」――という解釈も捨てきれません。

この声だけの一致という演出が、もし意図的なミスリードだとすれば、白の女王側が人間の少女を媒体として利用している可能性も見えてきます。

りりの変化と「観測から介入」への段階移行

そしてもうひとり、常にタブレットを携えていた少女・りり。

27話では、彼女がそれを手放していたのが印象的でした。

この変化は偶然ではないでしょう。

りりが「観測者」だったと断定するのは時期尚早ですが、もし彼女がアリスピアの戦いを見届ける立場にあったとすれば、白の女王陣営が観測介入へと段階を進めた兆しと見ることができます。

過去を再演するように見える時間の逆行は、観測者たちが得た情報をもとに、物語そのものを上書きしている現象なのかもしれません。

舞台としてのアリスピア|「滅びの記憶」を内包する箱庭

第27話で戦闘の舞台となったのは大きな倉庫が並ぶ埠頭でした。

近海を遊覧するだけのアトラクションにしては規模が大きく、海の向こうとそれなりの規模での交流・交易があると受け取れます。

アリスピアの海の彼方にはいったい何があるというのでしょうか。

虚構の中の「現実」|異質な埠頭の風景

この場所が象徴しているのは、アリスピアという世界の「境界」でしょう。

街や公園などの日常の場と違い、埠頭や廃坑は「外」を思わせる場所。

しかしその先に、実際の外界――海の向こうや地の底にある「何か」――が存在するのかは語られません。

そもそも閉じた世界にそんなものはあるのでしょうか。

廃墟群が示す「一度滅んだ世界」

さらに注目すべきは、赤の女王と戦ったあの文明崩壊後の廃墟群です。

新OPで先代プリンセスたちが立つ街並みがその廃墟と一致していることから、アリスピアは少なくとも一度「滅び」を経験していると推測されます。

もしそうだとすれば、「再演」というモチーフは単なる物語上の構造ではなく、世界そのものが何度も作り直される設定として機能している可能性があります。

繰り返される再演と「静寂なる平穏」

アリスピアは何度も滅び、そのたびに再構築される箱庭。

プリンセスたちはその都度、新しい「希望の形」を演じさせられているのかもしれません。

埠頭も、廃坑も、廃墟群も、その断片的な「過去の舞台」の残響として存在している。

白の女王が語った「静寂なる平穏」とは、この終わりなき再演を終わらせることなのか、それとも永遠に続けることなのか――

第27話は、その問いの予兆として、アリスピアという箱庭の奥行きを静かに覗かせた回だったように思えます。

まとめ|過去へ進み、原点へ還る物語

25話から27話にかけての3クール目は、時間を「巻き戻す」のではなく「過去へ進む」ような構成で描かれてきました。

これまでの戦いを少しずつアップデートしながら辿り直し、27話でついに第1話――物語の出発点へと帰還します。

過去をなぞりながらも、新しい意味を与え、異なる形で再生していくこの流れは、アリスピアという世界そのものの構造に関わっているのかもしれません。

そして、ここから先はもう「遡る過去」が存在しない。

物語は再び現在を、あるいは「未来」を描き始めるのでしょうか。

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