プリンセッション・オーケストラ第24話は、赤の女王との激突が描かれた大きな山場でした。
圧倒的な作画と演出で盛り上げつつも、プリンセスたちの言葉がどこか上滑りして聞こえるなど、複雑な感情が残る一話でもあります。
さらに、物語の構造的には「ミッドポイント」にあたる回でありながら、謎や伏線ばかりが増えていく展開に戸惑いも覚えました。
とはいえ、Cパートで現れた白の女王、そして新たなプリンセスの登場は3クール目への期待を大いに高めてくれます。
ここでは、第24話を見て感じた複雑なお気持ちと今後への展望を、率直に語っていきます。
プリンセスたちの未熟さに感じたもやもや
第24話を見てまず強く残ったのは、プリンセスたちの言葉がどこか表面的に聞こえたことでした。
赤の女王がこれまでにしてきたことは、無辜の少女を襲いミューチカラを奪うという、到底許されない行為です。その点に関しては「いかなる大義名分があっても正当化できない」と断じるほかありません。
ただ、それでも気になったのはプリンセスたちの返答の方でした。
すべては赤の女王の掌の上?
プリンセスになったのも、
— 「プリンセッション・オーケストラ」公式 (プリオケ) (@priorche_info) September 22, 2025
みんなを守るのも!
わたしたちの選択です!#プリオケ pic.twitter.com/H2jx0Kczg8
私たちはあなたに選ばれたつもりなんてありません! プリンセスになったのも、みんなを守るのも、私たちの選択です!
引用元:プリンセッション・オーケストラ第24話
力強く響く言葉ですが、赤の女王が仕組んだ「試練」を潜り抜けた結果であることも事実。
赤の女王は最期までプリンセスの進化を促し、すべては彼女の掌の上だったのではないかと思わされました。
さらに、プリンセスたちは「淘汰の上に立っている存在」であるという現実を直視していないようにも映ります。
赤の女王にその点を指摘された際、ジールとミーティアは言葉を詰まらせましたが、リップルの力強い台詞で場が逸らされてしまいました。
プリンセスが勝利したという事実は、同時にバンド・スナッチを消滅させたことと表裏一体です。
どれだけ「赤の女王が言う『進化』ではなく、人との関わり合い・触れ合いで力を得た」と強調しても、その足元には彼らの犠牲が横たわっています。
その矛盾にどう折り合いをつけるのかが見えず、眩しい理想の裏にある未熟さが浮き彫りになったように思いました。
赤の女王の言葉をどう読むか
続いて気になったのは、赤の女王の言葉の受け止め方です。
赤の女王は「アリスピアを存続させるために進化が必要だ」と語りました。
ですが、プリンセスたちはこの発言を「さらなる繁栄のために強者だけの世界を作ろうとしている」と単純化して捉えている節があります。
なにそれ! 意味わかんない! そんなことしなくてもアリスピアは――!
引用元:プリンセッション・オーケストラ第24話
ミーティアが叫んだ言葉の続きを想像すると、「アリスピアはこれ以上の繁栄を求める必要はない=赤の女王は不要な繁栄を求めている」と思っているように聞こえます。
しかし、その直後に女王が口にしたのは――
「その場に留まっていたければ、常に走り続けなければならぬ」
引用元:プリンセッション・オーケストラ第24話
この言葉を素直に読めば、赤の女王仮説そのもの。
「変わらないためにこそ、変わり続けなければならない」という警句です。
ここには「このままではアリスピアが滅びる」という切実な危機感もにじんでいたように思えます。
その文脈を読み解かず、ただ「強い者だけが残る世界」と即断したからこそ、プリンセスたちの返答がどこか的外れに響いたのではないでしょうか。
もちろん、赤の女王のやり方は正当化できません。
無辜の少女を襲った罪が消えることはありませんし、淘汰や収奪を肯定することはできません。
ですが、会話そのものが噛み合わず、互いに別の次元で言葉を投げ合っているように見えたのが、今回の違和感の大きな原因でした。
未熟さと真っ直ぐさ、その先への期待
正直に言えば、今回のプリンセスたちの返答には「理屈の粗さ」「経験の浅さ」が強く出ていました。
赤の女王の論理が歪んでいたとしても、そこには「アリスピアを存続させたい」という一貫した目的があったはず。
それを一刀両断する姿勢は、正義感に満ちていて眩しい反面、「もう少し考えを深めてほしい」とも感じてしまいます。
ただし、それは彼女たちが中学生という年齢に立っているからこそのリアリティでもあります。
理屈よりも「信じたいものを信じる」。
未熟さと真っ直ぐさが同居するからこそ、プリンセスたちの言葉に力が宿っているのだと思います。
もしこの真っ直ぐさが、今後試され、痛みや挫折を経て、それでもなお成長につながっていくなら。
今回の違和感や苛立ちも、物語の必然として意味を持つのかもしれません。
だから私は、この理想の行方を見届けたいと思います。
プリンセスたちがどんな風に試され、揺さぶられ、なお貫いていくのか。見守る気持ちで続きを待ちたいです。
物語構造のもやもや|ミッドポイントでの停滞感
第24話を見て感じたもうひとつのもやもやは、物語の構造そのものでした。
ここでは「三幕構成」という枠組みを手がかりに考えてみます。
三幕構成とは?
映画や物語論でよく語られる「三幕構成」とは、物語を「序盤(第一幕)」「中盤(第二幕)」「終盤(第三幕)」の三つに分ける考え方です。
序盤で主人公が物語に巻き込まれ、中盤で試練や大きな転換点を経て、終盤でクライマックスと決着へと向かう――シンプルですが普遍的な型とされています。
そのちょうど真ん中に位置するのが「ミッドポイント」。
作品全体の方向性を定める重要な場面です。
ミッドポイントの役割と第24話の位置づけ
「ミッドポイント」は、物語を大きく転換させる重要な場面です。
ここで主人公たちは大きな真実に直面したり、後戻りできない状況に追い込まれたりと、物語の方向性がはっきり定まるのがセオリーとされています。
その意味では、第24話における「赤の女王戦」はまさに絶好のミッドポイントの舞台でした。
しかし、いざ蓋を開けてみると、「わずかな情報開示」と「さらに濃くなる謎」ばかりが残り、物語の方向性が曖昧なまま。
加速感よりも停滞感を強く覚えてしまいました。
もちろん、謎が増えること自体は悪いことではありません。
期待を煽る効果もあります。
ですが、4クールという長さを踏まえると、折り返し地点ではそろそろ「どこへ向かうのか」という手応えがほしいところです。
この停滞が布石なのか、ただの引き延ばしか。
判断はまだできませんが、視聴者(というか私)の期待を支えるには明確な方向性の提示が必要だと感じました。
作画と演出が見せた熱さと既視感
第24話は、作画と演出の面では非常に力の入った回でした。
アクションシーンの密度も高く、歌いながら戦うプリンセスたちの姿は文句なしに熱い。
とくに赤の女王との対峙では、キャラクターの動きや表情が丁寧に描き込まれ、クライマックスに向けた盛り上がりをしっかり演出していました。
映像としての完成度は高く、見ている最中は確かに胸が高鳴る瞬間もありました。
「シンフォギアっぽさ」との距離感
ただ、その一方で「シンフォギアで見た」という既視感も拭えませんでした。
もちろん、企画原案が同じなら似てくるのは自然なことですし、ファンへのサービス的な狙いも理解できます。
しかし、あえて似せるのではなく、むしろ差別化を意識して「プリオケならでは」の演出を積み重ねてほしかった、というのが正直な気持ちです。
SNSでは「完全にシンフォギア」と大盛り上がりでしたが、私個人としては「予想を超えることはなかった」という物足りなさがありました。
……とはいえ、これはあくまでも中年おばさんの難癖であって、シンフォギアを知らないちびっ子にはきっと新鮮で心躍る映像に映っているはずです。
「対話をしない」物語の危うさ
シンフォギアにないプリオケならではの特色があるとするなら、「対話をしない」ということが挙げられます。
シンフォギアの主人公・響は、敵がどれだけ心を閉ざしていても能動的に対話を試みるのが印象的でした。
しかし、プリオケのプリンセスたちはその道を選びません。
彼女たちは敵と理解し合うことをせず、自分たちの「正義」をそのままぶつけ合うことを貫いています。
対話無き正義と正義の衝突の先に待つものは何なのか──
そこには危うさと同時に、この作品ならではのテーマが潜んでいるように思えます。
新たな脅威|白の女王の登場
Cパートでついに姿を見せたのが、赤の女王と対をなす存在・白の女王でした。
白い髪と衣装に、黒真珠を思わせる青みがかった漆黒の肌。
「黒い肌をした白の女王」の造形は、このご時世になかなか攻めたデザインです。
声を担当するのは花澤香菜。
赤の女王を演じたのが水樹奈々だったことから、白の女王もシンフォギア声優だと思っていたので、まさかの配役に驚きました。
赤と白の対比
赤の女王が瓦礫の浮遊する亜空間に君臨していたのに対し、白の女王の拠点は静謐で近未来的。
彼女の傍らにはバンド・スナッチに相当すると思われるふたりの配下が控えており、どこか猫を思わせるシルエットをしていました。
もし彼女たちが元猫型アリスピアンだとすれば、犬型であるバンド・スナッチとの対比も面白いところです。
また、赤の女王が峻厳で威厳に満ちた存在でありつつも、バンド・スナッチに対しては愛情深い一面を見せていたのに対し、白の女王は表向きたおやかで柔和に見えるものの、その裏に冷酷さを漂わせています。
「アリスピアに静寂なる平穏をもたらしましょう」という彼女の言葉は一見穏健ですが、裏を返せば「滅びを受け入れ、心静かに終わろう」という思想の表れかもしれません。
赤の女王が「進化」を求めてアリスピアの未来を切り拓こうとしたのに対し、白の女王は「静寂」という名の停滞と終焉を望む存在なのではないか。
そう考えると、ふたりの女王はアリスピアの行く末をめぐって真逆の選択肢を提示する存在として、物語の後半を大きく揺さぶっていきそうです。
新プリンセスの登場|ヴィオラとネージュ
第24話の放送終了後、SNSや公式サイトで新たに発表されたのが「プリンセス・ヴィオラ」と「プリンセス・ネージュ」のふたりでした。
最初に情報を目にしたとき、思わず「すみれ先輩と6話のモブ子じゃん!」と声が出ました。
ずっと気になっていた伏線が、ようやくここで回収されるのかという驚きと納得の瞬間です。
すみれ先輩はこれまでもプリンセスに憧れているような発言をしていましたし、ネージュの正体と思しき6話の少女も、ただのモブにしては描写が印象的でした。
そう考えると、このふたりが新プリンセスに選ばれるのは必然だったのかもしれません。
そしてヴィオラ。イケメンすぎる……!
あまりにもイケメンすぎて、公式サイトの三面図何度も見ちゃう。
もちろん私の推しはこれからもベスであり続けるのですが、それはそれとして「イケメン新プリンセス」のインパクトには抗えません。
キャラクターとしての立ち位置も、プリンセスたちの新たな化学反応を生み出してくれるのではないかと期待せずにはいられません。
まとめ|3クール目に向けて抱く期待と未練
2クール目の山場を終え、物語はいよいよ折り返し地点を越えました。
ここまで情報開示が少なかった分、3クール目には大きな真相や背景が明かされるはず。
白の女王、そして新プリンセスの動向は特に気になるところです。
一方で、バンド・スナッチがほとんど語られないまま消滅したことは、今も心に引っかかっています。
このまま完全退場なのか、復活や過去編での掘り下げがあるのか。
わずかな可能性にすがりたい気持ちも正直あります。
期待と不安、ワクワクと喪失感。そのすべてを抱えながら、3クール目の幕開けを待ちたいと思います。
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