ついに放送が開始された『プリンセッション・オーケストラ』。
『戦姫絶唱シンフォギア』の原作者による新作と聞いて、最初の情報解禁から心待ちにしていたアニメです。
かわいらしいキャラクターと音楽の力をテーマにした世界観――一見すると王道の女児向けかと思いきや、随所に感じる「シンフォギア節」に、思わず嬉しくなってしまいました。
本記事では、第1話の見どころや気になるポイントをレビューしていきます。
言い逃れできないレベルで女児向けシンフォギア
「『プリンセッション・オーケストラ』の感想を書くにあたって、安易にシンフォギアを持ち出さない」と心に決めていたのですが、蓋を開けてみれば、あまりにもシンフォギア。
いやこれもうシンフォギアに触れないほうが不誠実でしょ。
これはもう、オマージュの域を超えて「やりやがった!! マジかよあの野郎ッ やりやがったッ!」な作品です。
というわけで、まずはその1話構成の完全一致ぶりについて、少し語らせてください。
1話のストーリー構成がシンフォギア無印と全く同じ
親友に誘われたライブに行き、異形の存在に襲われ、歌いながら戦う少女に救われる。
そして日常に戻った矢先、再び襲撃を受けて覚醒――この流れは、まさに『戦記絶唱シンフォギア』第1話と同じです。
黒背景にOP曲とスタッフロールを重ねる演出も、あまりにもあからさまで、手ェ叩いて笑っちゃいました。
シンフォギアも、金子氏が携わったRPG『ワイルドアームズ』のセルフパロディが多用されていました。
しかし本作は、それに留まらず、これは女児向けアニメじゃないッ!「女児向けシンフォギア」だッ! という気概が感じられます。
歌いながら拳で語るッ!シンフォギアを踏襲した戦闘スタイル
プリンセス・ジールの戦い方は、まさに「歌いながら戦う」シンフォギアのそれ。
拳を叩き込む瞬間に歌声の熱量が増すなど、ライブ感のある演出が随所に散りばめられています。
ただし、1話時点では「歌が攻撃手段である」という設定は明示されておらず、(シンフォギア未履修の)視聴者も、キャラ同様に「なんかすごいことしてる……」という印象を受ける構成です。
肉弾戦×歌という熱い展開に胸が高鳴る一方、作画はやや省エネ気味。
特にライブシーンは、顔や手のアップを多用しており、毎回予算を使い切っていた(使い切ってない)シンフォギア1話の圧倒的演出と、比べると見劣りするのは否めません。
とはいえ、4クールという長期構成を見据えるなら、このバランスは納得の範囲内とも言えます。
変身バンクが短い!? 演出?予算の問題?
変身ヒロインアニメの華である変身バンク。
女児人気の獲得は、変身シーンをいかに魅力的に描くかにかかっていると言っても過言ではありません。
PVで小出しにされていた変身バンクを、フルで見られると楽しみにしていたのですが、
いや短っ!!!!
女児向け変身ヒロインアニメの8割は2割の変身バンクが占めてるんだぞ!? 見せ場だぞ!?
と感じたのですが、これは演出上の選択で、2話以降でフルサイズの変身バンクを拝めるのかもしれません。
というのも、シンフォギア(無印)第1話も初回は変身シーンを抑え、物語の勢いを優先する構成でした。
本作も「引き」を重視し、視聴者を次回へ引き込むクリフハンガー型の構成を狙っているのかもしれません。
台詞に滲む「金子節」
本作の脚本に金子氏の名はないものの、台詞の随所に「金子節」ともいえる熱量や文体のクセが感じられます。
「だから絶対に邪魔はさせないッ!壊させないッ!なっちの夢は誰にも奪わせないんだからッ!」
といった独特の言い回しや勢いのある語尾(ッ!)など、シンフォギアやワイルドアームズを思わせるフレーズに既視感を覚えた人も多いのではないでしょうか。
シリーズ構成を担当する逢空万太氏が「ワイルドアームズ」シリーズのファンであることを考えると、この濃さも納得です。
とはいえ、狙った熱さがシンフォギア未履修の視聴者に刺さるかどうかは、今後の演出とのバランス次第。
個性的ととるか、古くさく感じるかで、評価が分かれていきそうです。
主人公・みなもの「覚醒」と成長の兆し
本来は「夢を応援する側」だったみなもが、自らも「夢を守る側」へと立場を変えていく過程は、物語の大きな転換点です。
なっちの夢を守りたいという気持ちが限界まで高まったとき、「歌のカケラ」が生まれ、彼女自身がリップルとして覚醒する──
その過程には、単なる偶然や巻き込まれではなく、彼女自身の意志が感じられるのもポイント。
また、みなもは、敵と戦うジールの姿を思い出して「おとぎ話に出てくるお姫様みたいに見えたよ」と評しました。
この台詞は、彼女にとっての「プリンセス像」が単なる受け身の存在ではないことを示しています。
「戦うお姫様」というイメージはすでに定番化しつつありますが、本作はそこにひとひねり加えて、「お姫様とは何か?」という問いを投げかけてきます。
みなもにとって「お姫様」とは、誰かを守る存在なのか、それとも夢を叶えるために戦う存在なのか――その答えを探していく物語が、ここから始まるのかもしれません。
ただの成長譚ではなく、「お姫様」という記号そのものを再構築していく作品になりそうです。
世界観の仕掛けと謎の提示|旧時代的なジェンダー観は意図的なもの?
物語の舞台であるアリスピアは、少女たちだけが足を踏み入れられる楽園のように描かれる一方で、男性的な脅威が外部から襲いかかる構図が取られています。
また、主人公みなもの弟の「男同士の真剣勝負」といった発言など、旧時代的とも取れるジェンダー観が垣間見えます。
これは現代的な多様性の流れとは一線を画すものであり、むしろ意図的に強調しているのでしょう。
そうであってくれ。
今後の物語でこの構造がどう扱われるのか、性別という枠組みを通してなにを問いかけようとしているのか、視聴者としてはしっかりと見守っていきたいポイントです。
まとめ:子供向け?大人向け?対象年齢のギャップ
『プリンセッション・オーケストラ』は、明らかにシンフォギアを意識した構成や演出が散見され、大人のアニメファンにとってはご褒美のような内容となっています。
一方で、女児向けと考えると少し疑問が残る部分も。
全体的な雰囲気は、プリキュアよりも90年代のセーラームーンやウェディングピーチに近い印象で、いまとなってはレオタード風の衣装やジェンダー観などを好ましく思わない親御さんもいるでしょう。
子どもと大人、どちらにも刺さるような狭間のバランスを狙っているとすれば、それは非常に挑戦的な試みです。
今後、親子で安心して楽しめる作品として成長していけるのか、注目が集まります。
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